糖尿病網膜症
どういう病気ですか?
糖尿病網膜症は網膜を栄養する毛細血管の病気です。毛細血管の壁が弱くなると、血管瘤ができたり、血中の血漿成分がにじみ出て浮腫が生じたり、出血がおきます。毛細血管の閉塞域が広がると、網膜が酸素不足になります。それに反応して新生血管を含む増殖組織ができます。これが破綻すると、硝子体出血が起きます。また硝子体がこれを牽引すると網膜剥離がおきます。
どういう治療をするのですか?
網膜の毛細血管が閉塞すると、組織が酸素不足になります。酸素不足になった網膜は、「酸素をよこせ!=血管をよこせ!」という信号を発します。これによって血管内皮増殖因子(VEGFといいます)というホルモンが放出されます。このVEGFにより、滲出病変、新生血管などが促進され、網膜症が増殖網膜症へと増悪します。治療の第一歩は、VEGF阻害剤の硝子体注射です。これによって網膜症を沈静化させます。つぎに、レーザーで酸素不足に陥った網膜を光凝固します。虚血網膜が光凝固で萎縮することで、酸素の需要が減り、網膜症は安定に向かいます。注射と光凝固で網膜症が安定しても、黄斑浮腫があると、視力の回復が悪くなります。以上の治療をしても、硝子体出血や硝子体による網膜牽引、増殖網膜症で視力が低下した場合は、硝子体手術が必要になります。糖尿病の患者さんは目が見えなくなるまで放置する人が多いので、いきなり硝子体手術になる例が多いです。
どういう手術をするのですか?
内視鏡で眼内に入り、硝子体出血の除去、硝子体牽引の除去、増殖膜の除去などですが、重症の増殖網膜症では、難易度の高い手術になります。通常、術中にレーザー光凝固も行います。黄斑浮腫に対しては、黄斑前膜や内境界膜のピーリングをします。