網膜剥離
どういう病気ですか?
網膜に裂孔ができて、水が網膜下に回って網膜が剥がれた状態です。硝子体は加齢とともに水っぽくなります。中年以降になると、あるとき、硝子体内の水が硝子体の外部に流出します。ちょうど風船を針でつつくと、風船が虚脱したようになるのと似ています。このときに飛蚊症が起こります。もともと眼底に変性巣があり、網膜と硝子体が癒着していると、硝子体の牽引により裂孔ができます。裂孔は硝子体により挙上しているため、水がどんどん網膜下に流入し、網膜剥離が拡大します。「カーテンが降りたように見えなくなった」、「黒雲がわいてきた」などの症状が出ます。黄斑が剥がれると一挙に視力が落ちます。放置すると失明します。
手術はいつすべきでしょうか?
網膜剥離の手術は、待ったなしです。
どういう手術をするのですか?
先に述べたように、中高年の網膜剥離は硝子体の虚脱により、網膜変性部が牽引され、裂孔ができることで生じます。硝子体が眼球運動に伴って動くと、裂孔は挙上され、そこから硝子体液が網膜下に回り、どんどん網膜剥離が広がります。手術は内視鏡で目の中に入り、牽引の原因になっている硝子体ゲルを切除します。その後、硝子体腔を空気で置換し、それとともに網膜下に廻った液体を吸引します。次に裂孔の周囲をレーザー光凝固で固めます。最後に硝子体腔に膨張性のガスを注入します。ガスは2週間くらいで吸収します。この手術をすると、術中または術後に白内障を生じやすくなります。50歳以上では、通常、白内障の手術(水晶体を人工レンズに置換する)を同時にします。1回の手術で85%が治りますが、15%で再発が起こりえます。たいていの場合、術後の硝子体収縮による裂孔の再開口、もしくは新裂孔です。この場合、2回目の硝子体手術が必要になります。
若年者では硝子体剥離がない状態で網膜剥離が起こります。網膜剥離の10%くらいがこのタイプです。この場合、元々ある網膜の変性部に萎縮円孔ができ、そこからゆっくりと網膜剥離が広がります。網膜剥離が黄斑近くまで拡大しないと気づかないことが多く、たまたま学生実習で眼底検査をしたら見つかったということがよくあります。この場合の手術はバックリングといって、シリコンスポンジのようなものを眼球の外側から強膜に縫い付けて、眼球壁を外から持ち上げて、剥がれた網膜を接着させます。レーザーの代わりに眼球の外から冷凍凝固をします。